#1 Pro Tools マスタークラス・セミナー「グレゴリ・ジェルメンが語る最新R&Bサウンド・ミキシング・テクニック」レポート~リズム&ベース編

The only thing that matters in mixing a song is how much energy and emotion you drive through the speakers.
ミキシングで大切なことはただひとつ、エナジーとエモーションをどれだけスピーカーから伝えられるか。

— Gregory Germain / Recording, Mixing Engineer

フランスで生まれ、パリで育ったグレゴリ・ジェルメンさん。
日本のカルチャーに興味を持っていたグレゴリさんは、パリで、宇多田ヒカルさんの『Automatic』を聴いて、海外のブラック・ミュージックの要素と日本のJ-POPの要素を上手くミックスされている様子に衝撃を受け、日本への渡航を決意します。
そして、現在は多くの一流アーティストの楽曲にクレジットされる敏腕ミックス/レコーディング・エンジニアとして活躍され、グレゴリさんの姿は、国内外の様々なメディアで見る事が出来ます。

グレゴリさんが「とても尊敬している」エンジニア = Mark ‘Spike’ Stent氏。そして、Manny Marroquin氏、Michael Brauer氏等を「ヒーロー」と呼ぶグレゴリさん。
その姿勢、「常に学んでいます。」

グレゴリさんとPro Tools 。
前身のSoundDesigner時代に既に触れていた、というPro Tools との本格的な付き合いは、来日した際のPro Tools 5の頃から。以降これまで、メインのプラットフォームとして使用されています。
現在のグレゴリさんのスタイルは、Pro Tools をベースに、ハードウェア機器も併用する「ハイブリッド」型。
それは、先に名を挙げた、尊敬する先人達が「ハイブリッド」スタイルであり、「自然にそのスタイルを踏襲した。」と。
「アナログはユニーク」なもので、「プラグインでは真似できない」事を理解した上で、数々のプラグインを積極的に使用する、そのスタイル。

STY氏をはじめとする、数々のプロデューサー、アーティスト達とのセッションを日々、行っているグレゴリさん。
その際、意識している事。
「プロデューサー、アーティスト、作り手のビジョンから離れない。」
作りたい音、出したい音を再現し、更にもう“ひとさじ”を加える、それが自分の役割だ、と語るグレゴリさん。
グレゴリさんの携わってきた作品達は、海外のチャートにもランクインされています。
— 海外作品との違いは?
「基本的に、歌は“J-POP”、歌詞を聴かせる事を意識しています。でも、トラックは、海外作品同様の太さを持たせています。」
日本の歌謡曲のマナーに則りながらも、海外水準のサウンドを聴かせる、その手腕。


2019年2月、東京某所。
この日、グレゴリさんは、満席の受講者に、STY氏プロデュースのアーティスト、BananaLemonの楽曲『JOYRIDE (#SorryNotSorry pt.2)』を教材に、その蓄積されたテクニックの一部を披露。

例えば、ボーカル。
「1本のボーカル・トラックを 歌のレンジによって複数のトラックに分けています。」
そうする事で、トラック全般にオートメーションを書く必要がなくなると。

「ミックスを始めるにあたっては、とにかくバランスをとります。パンとフェーダーだけでプラグインを使わずにどこまで行けるか、勝負して。そして、これ以上行けないな、というところまで来たら・・」
ようやく、オートメーションを書いたり、ダイナミクスをかけたりといった処理を行うと。
「そこからゆっくりとプラグインを加えて行く感じです。」

そして、冒頭に挙がったグレゴリさんの「ヒーロー」である名エンジニア、Michael Brauer氏が得意とする「パラレルコンプレッサー」
勉強熱心なグレゴリさんは、自身でも「パラレルコンプ」を研究。
「コンプレッサー単体をそのままインサートすると、どうしてもトランジェント、ダイナミクスが崩れる。」
狙っているのは、「コンプから生まれる“トーン”。」例えば、フェアチャイルドのトーン。
「そのトーンを原音と混ぜる、そうすると、両方のいいものが得られる。」
ダイナミクスのあるものと、コンプレッションのかかっているもの、両方のいいところをミックスして聴かせる技。
今回披露された上記楽曲の様々なトラックでも、グレゴリさん流の「パラレルコンプ」が使用されます。
◆ドラム / キック

R&Bスタイルの要、キックの音。

こちらにも「パラレルコンプ」。

1台目、Waves『dbx 160』「これは、キックとスネアにかけています。」


2台目、Avid『Focusrite d3』。こちらを「dbx 160Aの様な設定に」した後に、Avid『Pultec EQP-1A』をセット、低域をブースト。「これは有名なトリックで、元のキックには存在しないLowを作る様なイメージ。」

3台目、SSL Busコンプ系のAvid『Impact』「こちらはドラム全体にかける用で、アタックは最速、ピークはつぶして、リリースだけを入れています。そこからEQしたり・・・」こちらも、『EQP-1A』をその後段にセット。
なんと、3種の「パラレルコンプ」バスをスタンバイ!
これらは、テンプレートとしプリセットされており、セッションの都度、探りながら、抜き差ししながら音を作るそうです。

更に、キックへの怒涛のトリートメントが続きます。

トリムで音量調整した後、UA『Little Labs VOG(Voice Of God) Bass Resonance』を。ベースシンセの様に、低域を作るプラグイン。

その後、Waves『JJP Puig-Tec EQP-1A』でローを足し、

Waves『api 550B』で10kHz付近のアタック成分をブースト、ローも少し加えます。

そして、Plugin Alliance『SPL Transient Designer Plus』「ハードにはない、サイドチェイン機能がプラスされていて、低域だけにアタックをかけています。Transient Designerは、どうしても音が硬くなるので、低音だけかけると、ローがすっきりします。」

更に、SIR Audio Tools『StandardCLIP』を。Diplo等ベース系でよく使われている、クリッパーと呼ばれているリミッターです。通常のリミッターはアタック・リリースがあるので、ポンピングして音が変わるのですが、これは綺麗に抑えられます。」これで「キックを自然に抑えながら、ミックスの全体の音量を上げる事が出来る様になります。」
続いてWaves『SMACK ATTACK』「先のSPLと同じ様なエフェクターで、失ったトランジェントをちょっと戻す為に使っています。SPLではローのみ、こちらは全体のトランジェント補正です。」

「こちらを先程のコンプの音と混ぜてます。」
そうして、ひとつのキックの音に!

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◆ドラム / クラップ、スネア

本楽曲では、通常のスネアにあたる部分にクラップが使われています。
このクラップ音の処理を解説。


「はじめに、SSLのEQでローを削って。」続く『api 560』で16kHz付近を足しています。「これは、USのやり方で、すごく上を出します。上を出すと、前に出てくるのです。」
その後、Brainworx『bx digital』のMS EQで「真ん中だけ5kHzあたりを少し出しています。」
そして、Waves 『MANNY MARROQUIN EQ』「 Avalon EQ Air Bandを再現しているらしいのですが、こちらで更に上を上げています。」

「その後、わざとリミッターを入れています。」ここでは、McDSP『ML4000』を選択。「これは、KneeとReleaseを選択できるコンプなのです。」その後、先にも登場した『StandardCLIP』でレベルを止めています。

そして、こちらも先に登場したWaves『SMACK ATTACK』で、「こちらではトランジェントの為、というよりも、サスティンを減らす為に使用しています。そうすることで、ちょっと跳ねた感じを出せます。」

適所で使用されるスネアには、
「大好きなEQ」Waves『Scheps 73』「ちょっと高域を上げています。」
その後に『StandardCLIP』を。

 

◆ドラム / ハイハット

続いて、ハイハット・・・

「これもよくやる技ですが、Avid『Lo-Fi』で歪ませて、『StasndadCLIP』で止めるています。こうすることで、音圧が出ます。」

ドラム・パートは、「ピークのコントロール」が要(かなめ)だと、グレゴリーさん。「ピークが行き過ぎると、ステレオスペースを取ってしまいます。その上でレベルが欲しいから、そのバランスが重要です。」
そのレベルのコントロールの為に、少し前はリミッターを 最近はクリッパーを積極的に活用しているとのこと。

「ドラム・トラックでは、フレーズによって、例えばクラップの連打の箇所等、細かなところでトラックにオートメーションを書いたりもしています。」
◆ベース

続いて、リズム・セクションのもうひとつの要、ベースの音作り。
今回の楽曲では、「スーパー低音のベース」*1と「もう少し上の帯域寄りのベース」*1の2種のベース音が存在。

登場回数の多い「少し上の帯域寄りのベース」の処理は・・・

UA『DANGEROUS BAX EQ』を先頭に。「これは、Baxandall EQ(Peter Baxandallが50年代に考案したToneControl)を再現したEQで、簡単に言うと、フィルターですね。例えば今回の様なベースには、高域と低域のアナライザーでは見えない帯域に「ゴミ」があって、それがどんどん溜まると、結果、マスターのヘッドルームが失われてしまうので、それをBAX EQの上下のフィルターでばっさり切ってコントロールしています。
その後、別のEQ(今回は『PuigTec EQP-1A』)で、通電されているローだけを上げて行く。今回は100Hz付近をBOOSTしています。BAXのフィルターのTILTがめちゃくちゃイイので、クリアにコントロールできます。」

「その後、『bx digital』を立ち上げています。その中の機能「MONO Maker」を使っています。これは、ステレオ→モノ機能なのですが、周波数を選べるので、今回は60Hz以下をモノにしています。そうすることで、小さなスピーカーや携帯プレイヤーで聴いている人にも、ちゃんとローが真ん中に残っている。」

また、「小さなスピーカーや携帯プレイヤーでは、ローが聞こえないので、ちょっとだけベースを歪ませると、低音のラインが見えやすくなります。」その為、今回はSoundtoysのSatulator『DECAPITATOR』を使用。

更に、「最初にBAX EQでコントロールしているから、下の部分を自分で自由に使える様になっています。そこで、Waves『Renaissance Bass』で30Hz付近を出しています。」
BAX EQの効用。「BAX EQ無しで、先のPultecやこの『Renaissance Bass』を立ち上げると、下に存在している部分がそのまま持ち上がるだけなので、カオスになっちゃいますね。」

そして、要所で登場するスーパーローのBass。
元々ローがある音、そこに『Little Labs VOG(Voice Of God) Bass Resonance』を挟み、更にPultecでオーバーアクション。
「この音はポイントでしか出てこないので、ちょっとドラマチックにした方が面白い。」
そして、こちらにも『DECAPITATOR』で「ちょっとだけ歪ませています。」

— キックとベース、及びリズム・キット、その音量のバランスをどの様に判断していますか?
「時々やっている方法は、MONOの小さなスピーカーで聴いて、例えばapiのEQで、60Hz付近の「ベースを切る」のか、「キックを切る」のか、比べて聴いてみて、どちらが勝つのか、で判断したりしています。」

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◆シンセ系

続いて、上物系。


「今回のメインのテーマ・パーツ(Pluckと表記)はパーカッションっぽいシンセなので、わざとコンプ(McDSP『CompressorBank CB101』)をかけてつぶしてます。つぶしてるんですけど、スレッショルドはめちゃくちゃ低いんです。Ratio 1.5とか、ほんのチョットだけ。」
その後、「abletonユーザーは知っている方が多いかもしれませんが、Xfer Records の『OTT』、簡単に言うと、マルチバンドのコンプ、エキスパンダーをひとつのプラグインにまとめたもの、これ無料のプラグインです。たくさんのEDMのトラック・メーカーに愛用されていますね。けっこう激しく音が変わるプラグインですが、僕は今回みたいなシンセパートに、例えば今回は7%という感じでわずかにかけて、エクサイターみたいに使っています。」
その後、「音が暗めだったので、Waves『api 550B』で8kHzをちょっと上げて・・・」
その後、「大好きなEQ」eiosis『Air EQ』を。「SlateDigitalの開発の人が作ったEQなのですが、この人は凄くEQにマニアックで、このEQもアナログのEQに近い。ちょっとだけ、1dB変えるだけでも極端に音が変わるから、大好きです。今回は、シェルビングで2kHzあたりをちょっと持ち上げています。基本的には、音を聴きながらやっていますので、どの周波数、というよりは、カンですね。」

パッドシンセには、

「先程と同じ様にコンプ(『CompressorBank CB101』)をかけて、その後に、ちょっとマニアックなプラグインですが、KUSH『Clariphonic』をかけています。これは、パラレルEQハードウェアを再現したものですが、作った人は、耳を使ってほしい、という希望から、数字を表記せず、Clarity、Focas、という用語が表記されています。」

「その後に、Brainworx『bx digital』を足して、今回は、サイドだけに高域のEQを当てています。その分、ステレオwidthをちょっと広げて。こうしたMSのEQで拡げると、真ん中の部分が少しすっきりするから、キック、スネア、ベースがもうちょっと前に出てくる様になります。特にこうしたパッドシンセの様な持続音は、うまく処理した方がいいと思います。」

その下のアルペジオ・フレーズには、『OTT』をかけてます。
メインのリード・シンセ・フレーズには、「『OTT』をかけた後、『DECAPITATOR』を。そこではEQでブライトに、そしてドライブ感を足しています。」

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グレゴリさんのミックスでは、ドラムやベースには、EQやダイナミクスを複数使っての繊細な処理、シンセパートには、大胆なエフェクティブな処理を行う傾向がある様です。

 

それにしても「怒涛」
日本の音楽シーンを音で支える若きエンジニアの“技”のラッシュ、続編でいよいよボーカル・パートの解説へ!
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【profile】
Gregory Germain / グレゴリ・ジェルメン:
フランス生まれ、パリ育ち。日本の文化に憧れて10代の頃から様々な日本の音楽に触れる。20歳で来日し、レコーディングエンジニアを目指す為、音楽専門学校へ入学。
卒業後は、スタジオグリーンバードでアシスタントとして数多くのメジャーアーティスト、バンドの作品に参加。
日本語、英語、フランス語の三ヶ国語を巧みに操り、海外アーティストはじめ、海外プロデューサーとのセッションにも参加している。そして、2011年Digz, inc Groupに入社。
https://www.gregory-germain.com/

BananaLemon
https://www.bananalemon.jp/


 

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