【Torso Electronics】自由自在な音の彫刻ツール「S-4 Sculpting Sampler」構造解説!

発売以降初動的な人気で終わる事無く、今や良ツールとして人気が定着化しつつある「Torso Electronics S-4 Sculpting Sampler」を改めてご紹介したいと思います。

■「スカルプティングサンプラー」って何?

あまり聞き慣れない横文字が商品名の横に書いてある為、何なのそれと思う方は多いかと思います。「Sculpting」=「彫刻」という意味で、メーカー公式でも彫刻的サンプラーとして表現しています。

「彫刻」とはどういう意味かという事ですが、これを実感するにはこの「S-4」の全体像と音作りの構造について理解していく必要があります。

可能な限り簡略化してご紹介したいと思います。

■「S-4」の内部データ構造

■「S-4」の全体構造をざっくり解説!

「S-4」での制作は、「PROJECTS(プロジェクト)」という単位からスタートします。これはDAW(たとえばCubaseなど)でいうプロジェクトファイルのようなもので、パターンの構成、ミキサー設定、トラックやエフェクトの情報などをまとめて保存できます。1曲としても、長尺のミックスとしても活用可能です。

● SCENE(シーン)

「SCENE」は、4トラックのサンプルやオーディオを扱う“パターン”のようなもの。1つのPROJECTには最大128個のSCENEを保存できます。

「SCENE VIEW」では、これらのSCENEを番号順やランダムなど、さまざまなルールで再生可能。MIDIのプログラムチェンジにも対応しており、外部機器との連携もスムーズです。

● PERFORM VIEW(パフォームビュー)

ここでは「MACRO(マクロ)」と呼ばれるパラメーターを使って、ツマミやボタンひとつで複数の変化をリアルタイムに加えることができます。

最大12個まで設定可能なMACROを使えば、たとえば「MACRO1」でTrack1にビットクラッシュとリバーブを同時にかけたり、「MACRO2」でTrack2のフィルターとサンプル再生位置を同時に操作したりと、ライブパフォーマンスや即興的な音作りにも最適です。

● MIX VIEW(ミックスビュー)

4トラックのボリュームやパンの調整、全体へのコンプレッサーの適用などが可能なミキサー機能です。

特徴的なのは、ここでもMACROによるコントロールが可能な点。ミキサー自体を音作りの一部として活用できるのは、「S-4」ならではの魅力です。各トラックのサンプルの再生・停止もここで操作できます。

● MODULATOR(モジュレーター)

「SCENE」「PERFORM」「MIX」、そして後述する「TRACK」には、それぞれ4つのMODULATORが用意されています。

「MODULATOR」は先ほどのMACROにも似ていますが、波形や内部・外部の信号等のコントロールソースを用いてパラメーターに変化を与えるマッピングを行う事が出来ます。これをセクション毎に4つずつ設けられているという事です。ソースに合わせた変化を加え、緻密に複雑な変化を加えていく事も可能です。

さて、階層は「128SCENE」に戻り、その中にあるのが5つのデバイスです。

■音作りの中核「デバイスチェーン」

SCENEの中には、5つの「デバイス」が組み込まれています。本体右上の8つのツマミの下に並ぶ5つのボタンがそれにあたり、左から右へと音が流れていく構造になっているため、「デバイスチェーン」と呼ばれています。

それぞれの役割は以下の通り:

  • MATERIAL:音源部
  • GRANULAR:リズムやパターンの変化を生み出す
  • FILTER:音のフィルタリング処理
  • COLOR:歪みやノイズで音を変質
  • SPACE:リバーブなどの空間系エフェクト

■MATERIAL(マテリアル)〜音の源を選ぶ〜

「S-4」の音源の心臓部となるのがこの「MATERIAL」です。

サンプル再生デバイスの「DISC」、オーバーダブによる重ね録りも出来る「TAPE」、8音同時再生の「ポリフォニックサンプラー「POLY」と3つの方式で構成されています。表現に沿ったアプローチ方法を選んで各トラック毎に異なる音源を選ぶ事が出来ます。

それぞれの特徴を少しだけご紹介致します。

■DISC

ディスクから直接オーディオをストリーミング。長尺ファイルも容量の許す限り使用可能。

■TAPE

仮想テープレコーダーのように、ループ再生しながらオーバーダブで音を重ねられます。スピード変更や逆再生も可能で、録音自体が音作りの一部に。

■POLY

8ボイスのポリフォニックサンプラー。MIDIトリガーやベロシティ、エンベロープに対応。TRIGボタンで単音確認も可能です。

「MATERIAL」はこの3つの構成となっており、各トラックで組み合わせて使用していく事となります。それぞれの特性を活かして素材の活かす方法をイメージしながら方式を選んでいただければよいかと思います。

「MATERIAL」を音源部としてその後に続くDEVICEでも音を作り込んでいく事が出来ます。

■4つの音響デバイスで音を彫り込む

・MOSAIC

音を最大64の“グレイン(粒)”に分解し、リアルタイムで再構築。偶発的な音の生成や、アルペジエーター的な使い方も可能です。

・RING

RINGはフィルターなのですが、発信にスケールを付けたり、ローパス・バンドパス・ハイパス間でモーフィングする等、音作りに適した多彩なパラメーターを持つフィルターとなっています。

■DEFORM

このDEVICEはいわゆるディストーション的な歪み、コンプ、ビットクラッシュ、ノイズ等、音を破壊的に変化させる事が出来るセクションです。TILTのパラメーターで高音域に寄せる、低音域に寄せる等、帯域の調整も出来るのが面白いですね。

■VAST

VASTはいわゆる空間系エフェクターです。リバーブとディレイをコントロールしていく事になりますが、ディレイエフェクトにモジュレーションをかける等、より深い音作りのパラメーターを持っています。

「MODULATOR」等、もっと深堀りしてご紹介出来る点はあるのですが、今回はエンジン部となるDEVICEまでとして、これらを4トラックの中で駆使してSCENEを作り、様々なパターンの組み合わせ、再生、変化の妙を追求していく事となります。

■音を“彫る”という感覚

ここまで読んでいただいた方には、「Sculpting Sampler=彫刻的サンプラー」という意味が少しずつ伝わってきたのではないでしょうか。

「S-4」は、音を立体的に、まるで彫刻を削り出すように作り込んでいく感覚を味わえる、非常にユニークな楽器です。時間軸を含めた変化も加えられるため、もはや“彫刻”という言葉を超えた、四次元的な音作りも可能です。

スタイリッシュな外観からは想像できないほど、奥深く自由度の高い音作りが可能で、使い込むほどに新たな発見があります。まさに、クリエイティブな心を刺激する“没頭系”ハードウェア。

ぜひ「S-4」で、あなたならではの音の彫刻を楽しんでみてください!

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