映画と音:『オノ セイゲン presents オーディオルーム新文芸坐』~BECOMING LED ZEPPELIN / レッド・ツェッペリン:ビカミング
池部楽器店・発祥の地、池袋。
1975年7月よりその地で脈々と創業以来のスピリットを受け継いできた『ROCK HOUSE イケベ池袋店』。

そこから池袋駅東口方向に徒歩2分、様々な店舗がひしめく繁華街の中。
一角に現れるクールな『新文芸坐』のサイン。

1956年-1997年、この地にあった映画・サブカルチャーのコアな発信地『文芸坐』。その名を残し、2000年12月より新たなフォーマットで再興された名画座。
縦4.2m×横10.0mのスクリーン。264席。ゆったりとしたソファ・シート。

ミニシアターを超えた規模と設備を備え、2026年3月、英国Time Out World Wideの「The 100 greatest cinemas in the world / 世界の最高の映画館100選」にセレクトされた。

https://www.timeout.com/film/the-100-greatest-cinemas-in-the-world-right-now#
新スタイルのミニシアターとして様々な展開を見せてきた『新文芸坐』で、2023年4月より『オーディオルーム新文芸坐』を銘打ち、催されてきたシリーズ・イベントがある。
コアとなるのは、2022年末にインストールされたカスタム・オーディオシステム『BUNGEI-PHONIC SOUND SYSTEM(ブンゲイ・フォニック・サウンド・システム)』。
7.1ch/Dolby SRD-EX。
LCRメインスピーカーに同軸ドライバー搭載の大型4ウェイシステム、18インチドライバーサブウーファー*4で構成される破格のスピーカー・システム。

フルで鳴らすと音の透過性の高いスクリーンを揺らしてしまう程の音圧を出力してしまうこのシステムは先端のプロセシングで緻密にコントロールされる。
『オーディオルーム新文芸坐』では、このシステムをフルに活かした極上の音響で映画を上映することを主眼とし、セレクトされた映画を毎回「作品ごとに」音響チューニングが施される。
その“極上の音場”を創出するのが、この方。
名匠・オノ セイゲン氏。

「自分が観たい映画は少なくとも音響にはストレスなく、純粋に映画の世界に入り込みたいですよね。」(オノ氏)
『オーディオルーム新文芸坐』では新文芸坐の支配人の花俟(はなまつ)氏、そして観客から、この音響システムで見たい/聴きたい映画群がリクエストされ、セレクトされる。
「お客さんや花俟さんからボクに音響調整させたい映画を提案してもらい(ボクが選んでるわけではありません)その作品をボクも観てみたい!となれば、配給会社に音響調整してもいいかをお伺いを立てて、許諾されたら『オーディオルーム新文芸坐』イベント上映となります。音響調整をする場合には、内容に関わらず必ず配給会社の許諾が必要となります。」(オノ氏)
『オーディオルーム新文芸坐』では毎回、「作品ごとに」、事前にオノ氏が深夜または早朝の新文芸坐に足を運び、ダビングステージ(またはMA ミキシング)でプロデューサーや監督が目指したであろう、より理想的音場を推測し、チューニングを施す。
「『映画体験の半分は音だ。音は感動を伝える。』・・・ジョージ・ルーカスの名言ですね。音が良くなると映像や空間への没入感は無意識のうちに高まります。」(オノ氏:SDM HPより)
レコーディング/ミキシング/マスタリング・エンジアとして、そして自身も音楽家としてその活動を知られるオノ セイゲン氏。
これまで多くの映画作品にも関わってきた。
『パリ、テキサス』、『ベルリン・天使の詩』、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』を含むヴィム・ヴェンダース作品集。『ブリキの太鼓』、『死刑台のエレベーター 』、『81/2』、『ノルタルジア』、『ニュー・シネマ・パラダイス』、『バグダッド・カフェ』、『ムトゥ 踊るマハラジャ』、『オオカミの家』etc…. 様々な時代の名作群。その音声のリマスタリング・ワーク。
2024年の映画作品『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』においては、サウンドデザインのスーパーバイザー~MAダビング~マスタリングまで手がけている。(※こちらは新文芸坐での上演はまだ実現していない。)
そのオノ セイゲン氏により、新文芸坐のオーディオシステムに最適化され、『オーディオルーム 新文芸坐』で上映されてきた映画群:
【オーディオルーム新文芸坐】(2023年4月〜)
Vol.1 『ニュー・シネマ・パラダイス オリジナル完全版』
Vol.2 『真夏の夜のジャズ ステレオ 4Kレストア版』
Vol.3 『海の上のピアニスト』
Vol.4 『ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad) 』
Vol.5 『RYUICHI SAKAMOTO CODA』
Vol.6 『ブエナビスタ ソシアルクラブ ニューマスター版』
Vol.7 『グラン・ブルー 完全版 デジタル・レストア・バージョン』
Vol.8 『ベルリン 天使の詩 4Kレストア版』
Vol.9 『コンサート・フォー・ジョージ』
Vol.10 『パリ、テキサス 2Kレストア版』
Vol.11 『ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad) 』
Vol.12 『戦場のメリークリスマス』
Vol.13 『暗殺の森 4Kレストア版』
Vol.14 『GLENN GOULD GATHERING』
Vol.15 『キャロル・キング ホーム・アゲイン ライブ・イン・セントラルパーク』
Vol.16 『TAR/ター』
Vol.17 『エリック・クラプトン アクロス 24 ナイツ』
Vol.18 『リトル・リチャード アイ・アム・エブリシング』
Vol.19 『オスカー・ピーターソン BLACK+WHITE』
Vol.20 『モンタレー・ポップ』
Vol.21 『ジョン・レノン 失われた週末』
Vol.22 『フィシスの波文』
Vol.23 『ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦』
Vol.24 『ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版』
Vol.25 『バグダッド・カフェ 4Kレストア版』
Vol.26 『ボサノヴァ 撃たれたピアニスト』
Vol.27 『ハイパーボリア人』『オオカミの家』
Vol.28 『Eno』
Vol.29 『ミシェル・ルグラン 世界を変えた映画音楽家』
・・・
そして2026年3月、30回目の開催を迎えた『オノ セイゲン presents オーディオルーム 新文芸坐』でセレクトされた作品。
『BECOMING LED ZEPPELIN / レッド・ツェッペリン:ビカミング』

2025年作、創設期のストーリーがメンバー本人たちの証言により語られてゆく、Led Zeppelin公認のドキュメンタリー映画。当時、ほぼメディアに出演しなかった彼らの貴重な記録映像、音源群が集められ、そこにはもちろん、いくつものライブ演奏シーンも含まれている。
IMAXフォーマットで制作され、日本でもIMAX館で封切りされた本作。新文芸坐のカスタム音響システムで、オノ氏は果たしてどの様な音を・・・?
「ボクがロックのライブで聴きたい音が出来ました。」・・・新文芸坐での調整完了時、オノ氏からの言。
「あの頃のライブの音を再現できたと思います。映画ですが少し大きめのボリュームでいきます。ジョン・ボーナムのスネアとキック、職人ジミー・ペイジのギター、ジョン・ポール・ジョーンズのベース、ロバート・プラント・・・
最近のライブPAエンジニアにも聞いてもらいたいなぁ。」(オノ氏:SDM SNSより)
昨今のライブ会場でのPAに関して・・・
「ライブハウスからアリーナ会場まで様々なライブ会場に行くのですが、耳栓がないとダメな会場が多すぎて・・・あれは難聴になりますよ。今回は大音量でもぜったい耳に痛くない音にしました。」(オノ氏)
今回はいつも以上に時間をかけたというオノ氏。
「ベース、キック、スネアをちゃんと聴けるようにしたかった。上手くいきました。ロック・コンサートはこんな音で聴きたい。本作の池袋地区の封切館は、確かIMAXでした。IMAXは映画館。この日の新文芸坐は往年のロックコンサートの音響を強く意識しました。でも決して耳には痛くないのです。そこが大事なんです(笑)」(オノ氏)
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オーディオルーム 新文芸坐 Vol.30 『BECOMING LED ZEPPELIN / レッド・ツェッペリン:ビカミング』
新文芸坐のゆったりとしたシートに身を預け、場内の照明が落ちる・・・
映画冒頭、一音目で現れる音の差。
観る者を引き込む臨場感。
没入・・・自宅シアターはおろか、並み居る大手映画館でもなかなか得られない『オーディオルーム 新文芸坐』ならではの映画体験。
上映期間中の3月13日(金)、オノ セイゲン氏、音楽評論家の小野島 大氏を迎えての上映後トークショーも開かれた。

中高生時代、レッド・ツェッペリンの強烈な同時代体験を経て、今に至るお二方。

「一番感受性の豊かな10代の時、そういう時にガーンと影響を受けた、聴いたものっていうのは、一生残るんですよ。そこからアイデンティティが確立されて行く。」(オノ氏)

話題は音について。“ロックの音”とは・・・?
「今回やってみて、思い出したのは高校時代に聴いたレッド・ツェッペリンのこの音。ジョン・ボーナムの8ビート。」(オノ氏)

「中学生時代にレッド・ツェッペリンの『Whole Lotta Love』を聴いてガツンと来て、それからロックにのめり込んでいって。それで同時代の他のハードロック・バンドも聴いてみたり、雑誌とかで見て、後追いでそれまでのスゴいって言われていたバンドも聴いてみたんだけど、めっちゃショボくて。クリームの1stとレッド・ツェッペリンの1stまでたった2年しか経っていないのに、たった2年でこんなに音が違うんだって。」(小野島氏)

映画本編に映るジョン・ボーナムのドラム・セットへのマイキングにも話が及ぶ。
「キックに1本、トップに1本か2本、あとスネアに1本。これだけなんですよ。これはJazzの録り方と同じ。この場合はドラマーがドラムのチューニングをちゃんとしていないといけない。」(オノ氏)

「音の良し悪しを決めるのはもちろんドラムのチューニングと“マイクの位置”。ダイレクトにドラマーの聴いている音をそのまま録るのがトップのマイク。その録り方がうまくいっているのが2ndかな。」(オノ氏)
80年代以降のマルチ・マイキングについても触れ、「音のかぶり」「距離による音色の違い」をオノ氏自ら席を立ち、トークマイクを使って実演、解説する。

「ドラムセットという楽器だけではなくて、それを置く空間、床と壁がちゃんとしていたら、録音するマイクは少ないほどいい。もっと言えば無指向性で。」
マイクの本数は少なくてよい、という持論を語るオノ氏。
さらに・・・

「ツェッペリンの1stとか2ndを聴くと、部屋の音が鳴ってますよね。」(小野島氏)
「その“部屋の音”が大事、反射音と響きが大事なんです。部屋も鳴らさないと“ロックの音”にならない。」(オノ氏)

この日、観客からも感想の上がった「ベース」に関しても・・・
「ジョン・ポール・ジョーンズのベースがぐいぐい前に来てましたね。」(小野島氏)
「映画館の音響で僕が気を付けていることは、ちゃんとコントラバスの帯域まで音程が聴こえること。ベースの低音弦がどの音程を取っているか聴こえることが僕にとっては結構重要。」(オノ氏)

その他、ジミー・ペイジのプロデューサーとしての先進性、本編以降のツェッペリンのエピソード、ツェッペリン後のメンバーの活動・・・と、尽きることのない話題。
少年時代の衝撃を大人になったプロの目線で振り返る二人。
共有される“音の話”。

『オノ セイゲン presents オーディオルーム新文芸坐』
映画における「音」・・・見直されるべき重要項目。
映画館・池袋『新文芸坐』で体感できる、オノ セイゲンの“音”。
text by イケシブスタジオ S.N.
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★日本上映(2026年3月)にあたり、オノ セイゲン氏がDCP(デジタルシネマパッケージ)の音声リマスタリングを行なったブラジル音楽名作ドキュメンタリー映画が早くも新文芸坐に登場!
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【オーディオルーム新文芸坐 Vol.32】
『エリス&トム ボサノヴァ名盤誕生秘話』
2026年5月29日、 30日、31日
5月29日 上映後トークショー
ゲスト:小山雅徳さん(レコード愛好家/MusicaLocoMundo)、
山下泰司さん(映画DVD/Blu-ray制作者)、
オノ セイゲンさん(マスタリング・エンジニア)
5月30日、31日 上映のみ


オノ セイゲン氏愛用中
SDM 新カスタム・ケーブル
【限定販売中】
SDM / Family Labo
SD-9007 トランスファー・ケーブル
★PowerRec, Power DJ’s店頭で
ご試聴頂けます★
新文芸坐
https://www.shin-bungeiza.com
東京都豊島区東池袋1-43-5 マルハン池袋ビル3F
池袋駅東口徒歩5分
オノ セイゲン Seigen Ono:
レコーディング / ミキシング / マスタリング・エンジニア, アーティスト

録音エンジニアとして、82年録音の清水靖晃「案山子」「うたかたの日々」、坂本龍一「戦場のメリークリスマス」、渡辺貞夫「パーカーズ・ムード」(85年)「ELIS」(88年)、加藤和彦、三宅純、ヒカシュー、青葉市子、東北ユースオーケストラ、ジョン・ゾーン、マーク・リボウ、 アート・リンゼイ、ビル・フリゼール、ラウンジ・リザーズ、オスカー・ピーターソン 、キース・ジャレット、マイルス・デイビス、キング・クリムゾン、ジョー・ジャクソン、デヴィッド・シルヴィアン、スティーブ・ジャンセン、など多数のアーティストのプロジェクトに参加。2012年からは映画Blu-ray化の音声トラックのマスタリングも手がける。
また、アーティストとして1984年にJVCよりデビュー(今年40周年)、87年に日本人として始めてヴァージンUK(アーティストとして3枚)、ヴァージン・ミュージックパブリシング(作家として10年)と契約。同年、コム デ ギャルソン 川久保玲から「誰も、まだ聴いたことがない音楽を使いたい」「洋服がきれいに見えるような音楽を」という依頼によりショーのためにオリジナル楽曲を作曲、制作。アート・リンゼイ、ビル・フリゼール、ジョン・ゾーン、マーク・リボウ、フレッド・フリスら、80年代のNYダウンタウン・シーン最精鋭たちが結集した『COMME des GARCONS SEIGEN ONO』は、2019年度 ADCグランプリ受賞。 1993年以来スイス、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルに4回、アーティストとして出演している。
SDM / サイデラ・マスタリング Saidera Mastering & Recording:
オノ セイゲン氏により1996年に設立。早期よりDSD/SACDをはじめとするハイ・レゾリューション・フォーマットを手がけ、ハイレゾ・シーンの品質向上、普及に大きな貢献を果たす。近年では映画Blu-ray化のためのマルチトラック・マスタリングをはじめとする映像分野の音声も手がけ、その品質向上に寄与。
