ちょっと偏った楽器フェア2016レポート(3)

個人的な趣味嗜好でお送りしております楽器フェアレポート、最後はヴィンテージリバイバル系の新ネタ投下です。

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出た!!!VOX Continentalがまさかのリバイバル!

今年のWinter NAMMで突如モックアップが展示されて話題を呼んだVOXブランドの新作オルガン。蛍光表示管の技術を応用して開発された、小型・低消費電力の真空管「Nutube」の実装例としての展示でしたが、今回は電源も入って更に開発が進んだ模様です。VOXらしいオレンジ掛かったパネルに並ぶオルガンに特化したコントロール&ディスプレイ、そして勿論Nutubeも光ってます。

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まだ音が出る段階ではないそうですが、これは期待しちゃいますね!奏者の手元を見せるスタンドも完璧、でも出来れば鍵盤は白黒反転でお願いします(笑)!

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ソフトシンセは勿論、まだシンセサイザーのマルチティンバー化や小型化も発展途上な1980年代~90年代。クライアントからの様々な音色リクエストに即座に対応するために、膨大なシンセサイザーや音源モジュールを所有し、オペレートする「マニュピレーター」という職業がありました。

当時、少しでも設置スペースを確保するために、シンセサイザーが楽器であることを証明する最大の要素である「鍵盤」を撤去し、音源モジュール化してしまう禁断の改造、通称「鍵盤カット」が流行していた訳ですが。

先日音源モジュール版として登場した「ARP Odyssey」は、そんな時代の何ともいえない背徳感を味わうことができる(?)、実にマニアックな製品として個人的にオススメです。

 

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ODYSSEYといえば、思わず二度見したのがこちら。すっかり見慣れちゃった復刻版ODYSSEYと比べて一回り大きい・・・ていうかこれが通常サイズ(!)

でも白パネルはピッチベンド部がPPCじゃなくてロータリーノブだし、妙に状態が良いし・・・と思ってよく見たら「ARP ODYSSEY FS」。FS=Full-Sizeですよ!しかもニューヨークで限定生産って!

Coming Soon!とのこと、ご期待ください!

 

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はい来ました、Model D。本国での限定復刻のアナウンス以降、待ちに待った実機とのご対面です。オリジナルModel Dを溺愛する私にとって、気になって仕方の無かった一台です。

その佇まいはもう、非の打ち所がありませんね。誰がどう見てもMinimoog、Minimoog以外の何者でもありません。木部の色あいも70年代中期頃の雰囲気で、私達が最も目にするMinimoogの色ですね。

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演奏時に目にする部分で異なる点が、このベンダーボックス奥のLFO RATEノブ(と直上の関連したルーティングスイッチ)。オリジナルはここに右側のGLIDE/DECAYをそれぞれコントロールするフットスイッチ端子が用意されていました。しかし端子サイズが特殊なため、Mimimoogユーザーの95%以上が使ったことの無い端子として有名です(当方脳内調べ)。端子を撤去した穴を増設LFOコントロールに流用する改造も多く見られますが、それに倣った感じですね。

ご存知の通りMinimoog Model Dには独立したLFOが存在しておらず、VCO3を鍵盤から切り離して周波数帯を低く設定することでLFOとして使用するのですが、当然この状態では2基のVCOしか使用できません。まぁ通常は2VCOでもお腹一杯な強いサウンドを持ってますが、3VCOのトゥーマッチ感も積極的に使えるのは良いことですよね。

ていうか、そのサウンド!状態の良いMinimoogそのものです。このお腹痛くなる位のトゥーマッチな中低域、フィルターの滲み、エンベロープの反応。「在るべきところに在る」全てのコントロールを含め、オリジナルのMinimoogと言われても一瞬気付かないかもしれません。鍵盤タッチの若干の違いも、このサウンドとレスポンスを前にすれば全く違和感を感じませんでした。

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ちょっと気になったのが、ピッチベンドホイールの固さ。オリジナルの多くは割と敏感で、親指をホイール左側から斜め奥に押し当てて微妙なベンドを行っていたのですが、ちゃんとホイールの回転方向に力を掛けてあげないとホイールが回ってくれません(新品状態ではこんな感じだったのでしょうか)。もちろんリターンスプリングは入っていませんから、Minimoogならではの「イイ感じ」のベンドワークを物にするためには、先人達と同様にそれなりの鍛錬が必要かと思われます。

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最後に、背面パネルを覗き込んでみました。何とVoyager Old Schoolでは付いていなかったMIDI端子が付いています(笑)!MinimoogでPCM音源のピアノやオルガンを弾いて観客を煙に巻くことができますねっ!

更に、キーボードからのCV出力一式も今回新規に装備された部分です。

外部入力と2系統の出力もそのままで、有名なフィードバックテクニックもそのまま使える・・・のですが、既にEXT INにはLOW OUTが内部でルーティングされているみたいですね。ボリュームを上げるとブリっと歪んで、オーバーロードランプが点灯します。

増設されていたオクターブバッファの取り付けネジが見当たらないので、これは(ようやく)基板内に組み込まれたのでしょう。実際の各基板含め、内部を見てみたい衝動が抑えられません・・・。

外部入力端子も地味に「MOD.SRC」端子が増えています。トリガー入力はやはり標準ジャックのV-TRIGに変更されています。フットスイッチを繋いで足で演奏するという裏技を引き続き使えるようにS-TRIG切替スイッチを付けてくれると嬉しいなんて言ってるのは私だけですねすみません。

シリアルNo.の刻印もオリジナル同様で、ちゃんと確認できませんでしたが確か最終型のモデルDからの連番(120000番台)だったハズです。

・・・と、とにかく、正真正銘米国MOOG製の新品でこの雰囲気、存在感、サウンド、そして向上した使い勝手・・・。これによりオリジナルの価値が下がる訳では決してありませんが、何というかもう、複雑な心境です。AIR JORDAN 1が復刻された時のオリジナルオーナーの心境もこんな感じなのでしょうか(笑)。

 

というか、2016年の楽器フェアで、ARP ODYSSEYとMinimoog Model Dの決定版すぎる新製品が登場するって、ホントに(良い意味で)どうかしています(笑)。

過去にお伝えしたRolandのBoutiqueシリーズYAMAHAのRefaceシリーズも含め、各社のフラグシップ・モデルと同じ位の勢いがある昨今のヴィンテージ・リバイバル機器群。膨大な名盤を生み出した名機のサウンドを研究し、次世代に繋げるまたとないチャンスです。

 

状態の良いオリジナルが枯渇し、市場価値も高騰しはじめた今だからこそ。幅広い層のミュージシャンに素晴らしいヴィンテージスタイルの楽器が行き渡り、新たな解釈の元で素晴らしいサウンド、そして音楽が誕生するであろうことが、楽器販売に携わるものとして楽しみで仕方がありません!

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