[連載]SD-9007サイドストーリー #4 出会い

サイデラ・マスタリング&レコーディング(以下SDM)で使用する為に産み出されたケーブル『SD-9007』。
圧倒的な“性能”・・・その開発に至るまでの前日譚。
[連載]SD-9007サイドストーリー:
>>> #1 オノ セイゲン&SDM,そのツール
>>> #2 オノ セイゲン&DSD,SACD
>>> #3 SDMカスタムケーブル
2004年、[ Verve 60th Anniversary-ヴァーヴ誕生60周年記念企画 ]において、NYC ユニバーサル Studioにオノ セイゲン氏が日本から帯同した唯一のツール、SDMカスタムメイド・ケーブル『SD-9001』。
・・・その後程なく、線材の入手困難等の事情により、『SD-9001』は製造終了を余儀なくされる。
それから20年の間、SDMが常に希求してきたテーマ。
“『SD-9001』に代わるケーブルを。”
SDMではその後、立ち上げケーブルとして製品化された『SD-9003』の他、実用に至らなかった型番を含め、“理想のケーブル”の為の探求、各方面からの試作機の試聴が続けられた。

しかしながら“『SD-9001』に代わるモノ”に関しては、長らく不在の期間が続く。
きっかけは、オノ氏の80年代からの友人、糟谷銑司(かすや・せんじ) 氏。
ユイ音楽工房時代に長渕剛やBOØWYを手がけ、その後も布袋寅泰、今井美樹らの仕事で大きな足跡を残してきた伝説的音楽プロデューサー、糟谷氏。
(>>>Musicman HP 2007年掲載インタビュー)
オノ氏が全幅の信頼を寄せる音楽業界、重鎮中の重鎮。

その糟谷氏が、2020年台を目前に控えたある時、一人の人物をオノ氏に紹介する。
吉目木邦彦(よしめき・くにひこ) 氏・・・「多才の人」。
プロ・ベーシストとしてデビュー。
その後、ギターの原型となる中東の楽器・ウドを重点的に研究。ウドの新しい演奏技法を開発し、カタール国際音楽フェスティバルのウド部門でトロフィーを受賞。
1994年、国連ユネスコ/UNESCO の呼びかけにより世界遺産・東大寺で開催された伝説的コンサート『The Great Music Experience』(ボブ・ディラン、ジョニー・ミッチェル、ライ・クーダ、布袋寅泰、X JAPAN, 玉置浩二、近藤等則 etc.が共演)においては、日本側のExecutive Producerを務める。
更にその活動は、音響機器の研究を経て、オリジナル機器の開発・製造に至る。
技術者・吉目木氏における製品開発のアプローチの基幹となるキーワード:
『Western Electric / ウエスタン・エレクトリック』

19世紀末〜20世紀にかけて、米国において多数の革新的発明・技術群を生み出し、世界中に大きな波及をもたらしたヘリテイジ、Western Electric (以下WE)。
「WEこそがサウンドシステムの存在が消えて、演奏者が目の前に立ち現れる究極の音響技術の原点」(吉目木氏)
そのWestern Electric (以下WE)社の録音、マスタリング機器を研究・再生・検証して来た吉目木氏。更には、量子物理学にまで及ぶ先端テクノロジーへとその研究分野は広げられる。
吉目木氏が掲げるテーマ:
「WE社製品を超えるオリジナル機器を開発すること」(吉目木氏)
「入口から出口」:「楽器・マイクロホンから家で聴くホームオーディオまで一貫したシステム」を標榜し、機器群の開発・製造を続けて来た吉目木氏。
そして現在・・・海を越え、グラミー賞受賞アーティストやストラディバリウスを奏でるEUトップ・ヴァイオリニストといった世界各国の一流プロフェッショナル達への“オーダーメイド”に応える、圧倒的な「異能の人」。
「吉目木さんのバックグラウンドは、ボクは糟谷さんから紹介されるまで何も知りませんでした。しかし、ケーブルやアンプを聴けば、吉目木さんのモノを作る実力は一目瞭然。」(オノ氏)
“本物”を識る糟谷氏が取り持った、突き抜けた“才”と“才”の出会い。

そして・・・オノ氏から吉目木氏に依頼されたオーダー:
【SDMで使用する“理想のケーブル”の実現】
研究材料として“オリジン”『SD-9001』も吉目木氏に預けられた。
・・・その後まもなく訪れたコロナ禍。世界中から人の行き来が途絶えた時間。
その中でも両者の間では絶えず意見交換が交わされ、テスト機の行き来が重ねられた。
[連載]SD-9007サイドストーリー:
>>> #1 オノ セイゲン&SDM,そのツール
>>> #2 オノ セイゲン&DSD,SACD
>>> #3 SDMカスタムケーブル
糟谷銑司(かすや・せんじ) Senji Kasuya:
音楽プロデューサー
1975年11月 株式会社ユイ音楽工房入社
1988年3月 株式会社アイアールシートゥコーポレーション設立
1991年3月 株式会社アイアールシートゥスタジオ設立
ユイ音楽工房時代に長渕剛、BOØWYを育て、その後、布袋寅泰と共に株式会社アイアールシートゥコーポレーションを設立、布袋寅泰、COMPLEX、今井美樹、大野真澄 etc.を手掛ける。
>>>Musicman HP 2007年掲載インタビュー
吉目木邦彦(よしめき・くにひこ) Kunihiko Yoshimeki:
東京生まれ、東京大学科学史科学哲学科卒。
プロ・ベーシストとしてジョージ大塚マラカイボでデビュー。山口真文グループのレギュラーを経て霧生トシ子、ケニーカークランドなど多数のミュージシャンと共演。
その後、ギターの原型となった中東のウドを楽器の原点の一つとして重点的に研究、新しい演奏技法を開発し2016年のカタール国際音楽フェスティバルのウド部門でトロフィーを受賞する。
また、国連UNESCOの呼びかけにより1994年に東大寺で開催され、ボブ・ディラン、ジョニー・ミッチェル、ジョン・ボン・ジョビ、ライ・クーダ、INXS、ウェイン・ショーター、布袋寅泰、X JAPAN, 玉置浩二、近藤等則などが共演した伝説的コンサート『The Great Music Experience』においては、日本側のExecutive Producerを務めた。
技術者として、アメリカの国家プロジェクトとして開発された音響機器メーカー『 Western Electric / ウエスタンエレクトリック』社製品群の研究、再生を続けながら、量子物理学にまで及ぶ先端テクノロジーを研究。それらの知見を組み合わせた録音・音響機器群の開発、製造を行い、世界各国の一流プロフェッショナル達からのオーダーメイドの要望に応える。
[吉目木氏/Family Laboがサポートするミュージシャン・リスト(一部)]:
フェニックス Phoenix : 仏を代表する国民的バンド。2009年リリースのAL『Wolfgang Amadeus Phoenix』でグラミー賞を受賞。Coachella Festival等、世界各国の音楽フェスティバルにヘッドライナーとして出演。2024年パリ・オリンピック閉会式出演。
ユーリ・レヴィッチ Yuri Revich :EU圏における人気・実力No.1を誇るヴァイオリン奏者であり、数々の受賞歴を持つ作曲家でもあるモスクワ出身の音楽家。使用楽器リストに1709 “Golden Period” Stradivariusが含まれる。
劉宏軍 Hongjun Lyu:中国大連生まれ、天平楽府監督、正倉院楽器復原製作、1987年 映画「ラストエンペラー」で坂本龍一と共同作曲、2001年 NHKドラマ『陰陽師』『聖徳太子』の古代音楽指導/作曲等、多岐にわたる活動を続ける音楽家。
オノ セイゲン Seigen Ono:
レコーディング / ミキシング / マスタリング・エンジニア, アーティスト
録音エンジニアとして、82年録音の清水靖晃「案山子」「うたかたの日々」、坂本龍一「戦場のメリークリスマス」、渡辺貞夫「パーカーズ・ムード」(85年)「ELIS」(88年)、加藤和彦、三宅純、ヒカシュー、青葉市子、東北ユースオーケストラ、ジョン・ゾーン、マーク・リボウ、 アート・リンゼイ、ビル・フリゼール、ラウンジ・リザーズ、オスカー・ピーターソン 、キース・ジャレット、マイルス・デイビス、キング・クリムゾン、ジョー・ジャクソン、デヴィッド・シルヴィアン、スティーブ・ジャンセン、など多数のアーティストのプロジェクトに参加。2012年からは映画Blu-ray化の音声トラックのマスタリングも手がける。
また、アーティストとして1984年にJVCよりデビュー(今年40周年)、87年に日本人として始めてヴァージンUK(アーティストとして3枚)、ヴァージン・ミュージックパブリシング(作家として10年)と契約。同年、コム デ ギャルソン 川久保玲から「誰も、まだ聴いたことがない音楽を使いたい」「洋服がきれいに見えるような音楽を」という依頼によりショーのためにオリジナル楽曲を作曲、制作。アート・リンゼイ、ビル・フリゼール、ジョン・ゾーン、マーク・リボウ、フレッド・フリスら、80年代のNYダウンタウン・シーン最精鋭たちが結集した『COMME des GARCONS SEIGEN ONO』は、2019年度 ADCグランプリ受賞。 1993年以来スイス、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルに4回、アーティストとして出演している。

SDM / サイデラ・マスタリング Saidera Mastering & Recording:
オノ セイゲン氏により1996年に設立。早期よりDSD/SACDをはじめとするハイ・レゾリューション・フォーマットを手がけ、ハイレゾ・シーンの品質向上、普及に大きな貢献を果たす。近年では映画Blu-ray化のためのマルチトラック・マスタリングをはじめとする映像分野の音声も手がけ、その品質向上に寄与。
[連載]SD-9007サイドストーリー:
>>> #1 オノ セイゲン&SDM,そのツール
>>> #2 オノ セイゲン&DSD,SACD
>>> #3 SDMカスタムケーブル
