新世代・電子アコーディオン「KORG FISA SUPREMA COMPACT」発売記念!開発者インタビュー

コルグの共同創設者である長内端氏が夢に描き、約半世紀の時をかけて遂に2025年9月に発売された電子アコーディオン「KORG FISA SUPREMA」は、発売以来最高の電子アコーディオンをお求めの方に大変好評をいただいています。

初号機となったフラッグシップモデルを追うように、既に海外では発表されていた中型サイズモデル「FISA SUPREMA COMPACT」が2025年11月、日本でも発売されました。

開発者である株式会社コルグ ファティ・フェヒミユさんにお話を伺い、FISA SUPREMAの魅力を深堀りして参ります!

【フラッグシップモデルを知るには】

フラッグシップモデル「KORG FISA SUPREMA」の解説&デモ演奏をお楽しみいただける配信アーカイブもございます。こちらも是非ご覧ください。

【Fati Fehmiju, 杉山 卓 / KORG】あのコルグが電子アコーディオンを開発!FISA SUPREMAに見る創業者の夢|IKEBE LIVE SHOPPING # 159【鍵盤堂】

鍵盤堂(以下、鍵):ファティさん、本日はよろしくお願い致します。

ファティさん(以下、ファティ):よろしくお願いします。

鍵:今日はウェブサイト等には載っていない開発者ならではのお話を色々伺いたいと思いますので、よろしくお願い致します。

■短期間でコンパクト(中型モデル)の発売に至った経緯について

鍵:シンセサイザー等もそうですが、一般的にこうした電子楽器はフラッグシップモデル発売後、数年程度の期間をおいてコンパクトモデルが発売される事が多く、電子アコーディオンもそうした傾向がある物と思っていました。しかし、今回このFISA SUPREMAに関しては大型モデルが発売されてから僅か2ヶ月後のスピード発売となりました。

これはどのような意図があったのでしょうか。

ファティ:シンセサイザーとは異なり、アコーディオンは服のように身につけて演奏する楽器です。
そのため服のサイズと同じく、演奏者がそれぞれのスタイルに合ったサイズの楽器に出会えるよう、コンパクト・モデルもフルサイズ・モデルと同時に開発していました。
ただ、実際の発売にあたっては開発や工場での生産の兼ね合いから少しずれる形となりました。

鍵:なるほど一般的なキーボード類とは異なり、アコーディオンは演奏者が楽器を抱えるスタイルだからこそコンパクトモデルも同時に必要と考えられていたのですね。発表時は斬新に感じていましたが理に適った開発スケジュールだった事が理解できました。ありがとうございます。

■フルサイズ(大型)からのコンパクト(中型)化においてこだわった点

鍵:そうした背景がある中で、フルサイズからのコンパクト化でこだわられた点をお聞かせください。

ファティ:今回はSuprema Compactということで、フルサイズのSupremaと可能な限り同等のスペックで製品化を目指しました。サイズのせいでどうしても犠牲にせざるをえないスペックはありましたが、最小限に抑えて設計しています。
アコースティック楽器の場合、鍵盤式だと41鍵盤120ベース(フルサイズ)、もしくは37鍵盤96ベース(コンパクト)という仕様が王道ですが、今回は電子楽器である強みを活かし、37鍵盤ではありながら120ベースという構成を実現させました。

アフター・タッチやマスター・バーは非搭載ですが、蛇腹も大型と同じ品質と挙動のもので、  顎スイッチはコンパクト・モデルにも搭載しました。
「フルサイズ・モデルでないと出来ない」という要素を極力減らし、コンパクトな楽器を演奏したいユーザーにも最大限楽しんで欲しい、というのが開発当初からの思いでした。

ミュージシャンがそれぞれ自分のワークフローに最も合う楽器を選び、悩まず楽しく演奏して欲しいと思っています。

鍵:確かに。これまでの常識であった中型サイズだから機能がダウンするというのは、演奏者にとってジレンマに感じる事もあったのではないかと思います。自身の体のサイズに合った楽器で機能も音質もフラッグシップに準じた物が使えるというのは嬉しいですよね。

■フラッグシップモデルとの違い

鍵:そうすると、凄くコンパクト・モデルが魅力的に見えてくるのですが、当然フラッグシップ・モデル(大型)の方が優れている点もあるのかと思います。

これはどのような点にあるのでしょうか。

ファティ:コンパクト・モデルに非搭載の機能から見ていくと分かりやすいかと思います。

コンパクト・モデルはマスター・バーとアフター・タッチは非搭載です。加えてスピーカーのサイズが小さくなるため、その特性が異なります。
また、サイズの都合上、パネルのレジスター・スイッチが14個から12個になっています。(ただし、11/12、13/14を共通ボタンにすることで14個というレジスターの数を維持しました)

音源、大型機種とのデータの互換性、ピアノ・タイプとボタン・タイプでの互換性、蛇腹の挙動と品質、LCD、顎スイッチ、速度センサー、バッテリーなどは全てフル・サイズと同じです。

まとめると、違いはコンパクト化で非搭載になった先に挙げた一部の機能とサイズ、重量ということになります。

鍵:大型モデルならではの魅力もある訳ですね。スピーカーからの出音も確かにフラッグシップモデルの方がより豊かな響きになっているように感じます。もちろんコンパクトモデルの方もしっかり鳴っていますのであくまで比較上の差ですが。

単なる価格差の上位下位ではなく、ユーザーのご要望に応じて大型か中型かお選びいただくという発想は本当に素晴らしいと思います。アコーディオンプレイヤーに寄り添った設計をされているのですね。

※どのモデルにするかお悩みの方に向けて、インタビューページの最後に「ご要望別おススメ機種!」のコーナーがございますので、是非そちらもご覧ください。

■追加ダウンロード音色について

鍵:コンパクトの発売後、追加ダウンロード音色もリリースされましたね。

”French Jazz 2″、”French Jazz 3″ for Fisa Suprema

鍵:非常に特徴のある音色で、質の高さも感じました。これはどのような音色なのでしょうか

ファティ:追加音色の第一弾が今回のフレンチ・アコーディオンの音源でした。French Jazz 2 はユニークなモデルであり、French Jazz 3 は French Jazz 1 と 2 を融合したバーチャル・モデルとなっております。どれも特殊なMusette音色が楽しめる音源です。皆さんの素敵な演奏を楽しみにしております。

鍵:こうしたダウンロード音色等アップデートがあるのも、デジタルならではの魅力ですよね。買った後も自分の楽器がパワーアップしていくのは嬉しいものです。今後もこうしたダウンロードコンテンツはリリースされていくと期待して良いのでしょうか。

ファティ:そうですね。Fisaは買っておしまいの楽器ではなく、長く使っていただく楽器と考えております。この方向性を支える要素の一つが、ダウンロード音色をはじめとした新しいコンテンツだと考えています。詳しいことは今の時点ではお伝え出来ませんが、ぜひご期待ください。

鍵:なるほど、FISAユーザーは続報に期待して待ちましょう(笑)

■今後のFISA SUPREMAの展開について

鍵:KORGはシンセサイザーをはじめとした電子楽器・機材、ソフトウェア等の分野では世界中の方に長年愛され続けるトップブランドですが、アコーディオンの世界ではまだまだ珍しく見られる事も多いかと思います。これからどのような展開をしていき、広めていきたいとお考えでしょうか。

ファティ:KORGは創業からアコーディオンと縁が深いメーカーです。
(共同創設者である長内端はアコーディオン奏者)
その後は長年にわたりシンセサイザー・機材やソフトの開発を行っておりますが、今回のFisa 開発チームはアコーディオンの専門家たちが集まった特別なチームです。
電子楽器メーカーとしてアコーディオン業界に参入するだけではなく、アコースティック・アコーディオン楽器製造者の皆様とも連携を取り、業界をお互い支えながら盛り上げていきたいと考えています。

鍵:それは期待ですね!アコーディオンのイベントやコンサート等も各所であると思いますので、これから始めたい方や既存のユーザーの方も楽しんで盛り上がれると良いですね。

■FISA SUPREMAを選ぶべき最大のポイントとは

鍵:アコーディオンの購入を検討されている方はアコースティックや他社モデル等、様々な機種の中から検討されていると思います。そうした中でこの「FISA SUPREMA」を選ぶべき、ここがおすすめというポイントを伺えたら幸いです。

ファティ:Fisaが発売されるまでは、「電子アコーディオンの蛇腹挙動はアコースティックとは別物」「アコーディオンを習うことにおいて信頼性がない」という厳しい評価がありました。これが、我々チームが挑んだ、解決しなければいけない最大の課題でした。
その結果、Fisaでアコーディオンを始めても、あるいはアコースティック楽器と一緒に切り替えながらFisaを使っても、「蛇腹の操作性は同様である」というところまで辿り着くことができました。この部分が一番のポイントだと思います。

蛇腹はアコーディオンの心臓部であり、音を作るには挙動が自然でなければなりません。Fisaは電子楽器の利便性全てを提供すると共に、アコースティックと同等の演奏性を与えてくれる楽器です。ぜひ手にとって試していただきたいです。

とはいえ、私自身も8歳から長くアコーディオンを演奏してきた経験があり、電子楽器が完全にアコースティック楽器に置き換わるものだとは思っておりません。そしてFisaはそのために作られた楽器でもありません。

・ 夜間練習したいがアコースティックだと音量の問題で出来ない
・ ステージで演奏したいがマイキングが難しい
・ バンドと組んで演奏したいが異なるチューニングを持つ楽器と合わせるのが難しい
・ 演奏するジャンルの幅を広めたいが複数の楽器を同時に持つのが大変(収納や金銭的な問題も出てくる)
・ 気軽に録音したいが機材を集めるのも大変
・ 疲れている時に(蛇腹を使用せずに)指の練習だけしたい

・ リードや調律のメンテナンスなどの手間が気になる

等々、アコースティック楽器特有の課題も色々あるかと思います。
手作りゆえに再現不可能な唯一無二のアコースティック楽器は、これまで通り大切に演奏していただきながら、Fisaを取り入れていただくことで、電子楽器ならではの利便性も活かしつつ、演奏の幅をさらに広げていただきたいと考えています。

鍵:蛇腹はアコーディオン演奏の要ですから、この造りの良さはFISA SUPREMAならではの魅力ですね!やはり開発者が熟練の演奏家でもあるという事が蛇腹を始めとしたFISA SUPREMA全体の高い完成度に繋がっているのでしょうね。電子楽器ですが、アコースティック並に丹精を込めて作られているような職人の魂を感じます。

ファティさん、本日は本当に素晴らしいお話を聞かせていただきありがとうございました。

是非FISA SUPREMAをより多くの方に楽しんでいただきたいですね!

ファティ:こちらこそ、このような機会をいただき有難うございました。

是非とも店頭でお手に取って、私たちのパッションを感じ取っていただけたらと思います。

「FISA SUPREMA」ご要望別おススメ機種!

FISA SUPREMAはプレイヤーに寄り添った設計となっていますので、タイプ・モデル別にどのような方におすすめかファティさんが解説致します!

●ピアノタイプ

フルサイズ(大型)

ファティ:⇒レパートリーの面で41鍵盤が必要な方。マスター・バーやアフター・タッチなど機能面で迷ったらフルスペックが良いという人向け。しかも重量は10キロ!

コンパクト(中型)

ファティ:⇒37鍵盤9キロとコンパクト!しかも大型とほぼ同等スペックそのまま。魅力はサイズと重量にあり!

●ボタンタイプ

フルサイズ(大型)

ファティ:⇒アコースティック楽器だと珍しいマスター・バーなどが搭載され、10キロ、大型スピーカーなどフルスペックを求める奏者向けに仕上げています!

コンパクト(中型)

ファティ:⇒こちらはボタン奏者にとってコストパフォーマンス最高のスペックになっています。両手の音域は大型と同じ、違いはマスター・バーなどの僅かな機能だけですのでベスト・バリュー・チョイスと言っていいと思います!出音は大型と比べると少し抑え目ではありますが驚くほどパワフルです。

■鍵盤堂 店舗情報

鍵盤堂
日本最大級の鍵盤&アコーディオン専門店!

営業時間:11:00~20:00 年中無休(元日を除く)

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■プロフィール

Fati Fehmiju(FISA SUPREMA 企画・開発 / プロジェクトリーダー)