イタリア・FATAR/Studiologic本社訪問レポート【Part2:Factory/射出成型・組立】

Part1はこちら

世界中の鍵盤楽器メーカーが採用する、イタリアFATAR(ファタール)製キーベッド。その製造工場の模様を鍵盤堂特派員がお伝えします!


射出成型

FATAR工場でのキーベッドの製造は、単なる「部品の組み立て」だけではなく、「プラスチック部品そのものの製造」=射出成型から始まります。射出成型・・・プラモデルを嗜んだことがある方ならば、ついついテンションが上がってしまうワードですよね・・・!

これが、原料となる粒子状のプラスチック(ペレット)。写真のものは工業用プラスチックとしては最も一般的なABS樹脂です。他にも用途に応じて様々な色や樹脂がストックされています。

原料は、まず写真に写っている大きな釜で加熱され、除湿処理されます。

水分が飛んでサラサラになったペレットは、工場の天井付近を縫うように張っているパイプの中を伝って、工場内の射出成型機に送られます。

工場内には、様々な種類、様々な大きさの射出成型機が稼動しています。定期的な設備投資により、徐々に規模を拡大していったFATARの長い歴史が見て取れます。

プラスチックのペレットは、熱によりドロドロに溶かされた状態になり、金型と呼ばれる、モナカ状に合わさった金属製の型の中に高圧で流し込まれます。樹脂が固まったら金型が開き、中の部品が押し出されて出てきます。射出成型機では、これらの工程が自動化されています。

↑左側が、開いた状態の金型。金型が閉じ(右)、樹脂を注入、固まったら再び開いて部品が押し出されて出てきます。

こちらが工場内で最大の射出成型機。主にPAスピーカーのキャビネットなど、大型の樹脂製品が製造されていました。

工場内に置かれていた大型の金型。

そして、様々な大きさの金型。この金型の中に、FATARで製造できる様々なな部品の形が刻み込まれています。

こちらは工場内で最も小さな射出成型機です。

ここで使われる金型はこちらの小さなもの。こうした細かいナイロン樹脂のパーツが成型されていました。

こちらは、無数の金属片。TP100等のハンマーアクション鍵盤のハンマーに埋め込まれる錘です。

製造はほぼオートメーション。暖められた8個の錘はロボットアームによって射出成型機の金型の中へ。錘を包む様に樹脂を充填、効果したハンマーが続々と出来上がってきています。

1オクターブ分の鍵盤が、枝に付いたまま出てきました。この配置の理由は後ほど。


工場内を歩いていると、様々な場所で様々な部品が製造されています。

こちらの機械からは、成型されたてホヤホヤ(文字通り暖かいです!)のNuma Compact2シリーズの筐体が続々と生まれておりました。

Numa Compactの筐体、実はこんな感じに一体成型なんですね。コンパクト&軽量、非常によく考えられた設計です。

Numa Compact 2になって背面にスピーカーが追加されましたが、金型は初代モデルと共通です。構造上、背面パネルの穴まで成型するためにはスライド金型という特殊な金型が必要になり、コストも非常に高くなります。このため、成型後にNCルーターという機械で一つ一つ穴あけ加工が行われます。

しかし、これだけ大きな筐体ですから、歪み等も発生しやすいのでしょう。成型された部品は一つ一つ検査され、基準に満たないものはこちらに集められます。これらは外部の工場に送られ、再び粒子状のペレットとしてリサイクルされるそうです。

某社のMIDI鍵盤のイルミネーションらしき部品も製造、その場でテストも行われていました・・・!

こちらは、V-Accordionのトレブル(右手側鍵盤部)の裏蓋・・・!

他にも注意深く観察していると、実に多種多様、意外なブランドの意外なパーツが・・・(自粛)


組立セクション

ガチャン!ガチャン!と賑やかな機械音で溢れる射出成型セクションから、隣のセクションは一転して静かな雰囲気です。

完成したばかりのNuma Compact2がズラリ。

組立セクションです。

FATARでは、プラスチック部品の成型やキーベッドの製造だけでなく、製品の最終的な組み立て・梱包まで行うことができます。もちろん、Studiologicブランドの鍵盤楽器はここで全て組み立てられています。

大きな製造ラインで大量生産を行うのではなく、1~3人で構成された小さなチームのユニットがいくつもあり、需要に応じた小ロット&多品種の製造を行っています。国内大手メーカー含め、現在では殆どの電子楽器がこうした方式で製造されています。

???

!!!

Roland Europeは数年前に閉鎖されてしまいましたが、V-Accordionの生産はFATAR工場に移転、そのままMade in ITALYとなっています。こちらは最終チェック段階、各種測定器で検査中です。

製造・検品を終えて梱包を待つK社のキーボード。欧米市場向け、日本では発売されていないアレンジャー・キーボードですね。

キーベッドの供給に留まらない、FATARと世界中のメーカーとの深い関係が伺えるセクションでした・・・!


次回、いよいよキーベッド(鍵盤ユニット)組み立て工程に肉薄します!
<Part3に続く>

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