【新製品】いよいよ発売!Nord Wave 2 徹底レビュー!

何だかもう遠い昔の事のようです。

2020年1月、例年通り開催されたNAMM Showにて発表されたNordブランドの最新シンセサイザー“Nord Wave 2”

その名の通り、PCM波形を素材に柔軟で音楽的なシンセサイズを実現したNord Wave(生産・販売完了品)のリニューアル&エボリューションモデルです。

Nord Waveの発売は2007年。いわゆるアナログシンセをモデリングで再現したバーチャル・アナログシンセの先駆けNord LeadシリーズにPCM波形やウェーブ・テーブル等を追加し、「アナログシンセの再現」からの脱却を果たした製品です。PCM波形を自在にグリグリいじれるその操作性とサウンドは、サンプル・プレイバック式の一般的なPCMシンセとは一線を画したNordブランドならではのシンセサイザーでした。

会場でざっくりチェックしただけでも、2代目Nord Waveは全てが新しい!Nord Leadの要素に加え、Nord Electro & Nord StageのDNAをも取り込んだそのサウンドと操作性は、「パフォーマンス・シンセサイザー」を名乗るに相応しいものでした。

しかし本モデルも例に漏れず、世界中を覆ったコロナ禍の影響でその後の情報が途絶えておりましたが、ようやく日本国内での発売が決定しましたよ!

 

そんな訳で、改めてNord Wave2の実機を徹底チェック。発売直前情報として、その魅力をお伝えします!


都内某所にて、ご対面。

デザイン

初代Nord Waveを含むNordシンセの系譜から大きく変わったのが、そのデザイン。パネル上面左側にコントロール系が集中し、傾斜したパネルを持つ従来デザインから、パネル中央にコントロール系が移動。箱型のウォーターフォール鍵盤だし、何気に鍵盤数も増えてるし・・・むしろNord Electroに近いデザインですよね。とはいえ、鍵盤横の傾斜があるだけで、ちゃんとNordブランドの「シンセ」に見えてしまうのには感心します。伝統のピッチベンド&Mod.ホイールの操作性も、「シンセ」ならばこの位置と角度であることが必須ですよね(写真上:Nord Lead 4、中央:Nord Wave 2、下:Nord Electro 6D)。

シンセサイズ

Nord Wave 2は「歴代の Nord Keyboard の中で最も⾃由度の⾼い⾳作りの性能を持つシンセサイザー」との事。アナログシンセとは違い、デジタルシンセってCPUやDSPの性能やメモリ容量さえOKであれば、極端な話「全部マシマシ」な何でもできる製品だったりします。しかし、それが楽器・音楽制作ツールとして最高なのか、といえばそれはまた別の話。

個人的な印象なのですが、Nordブランドのキーボードは、考え抜かれたユーザーインターフェースが徹底しており、ごく自然にその高度な性能を楽器として享受できる、という点において一貫しています。

もちろんそれは今回のNord Wave 2も同様です。バーチャル・アナログ、ウェー ブテーブル、FM、そしてサンプル・・・一般的なシンセサイザーの音源とされる、4種類全てを網羅している訳ですから、スペック上はどんな音だって出せる万能&多機能シンセ。しかし一つのセクションに纏められたパネルレイアウトは非常にシンプル&直感的で、音源を選んだらカテゴリや波形を選択、あとは音を聴きながらツマミやボタンをパパっといじれば・・・あ、これNord ElectroやNord Stageと基本的に同じ感覚です。

まずは、全ての音作りの基となる、そんな音を生み出す部分=オシレーターセクションを見てみましょう。

オシレーターセクション

シンセの素性を知るなら、「素」の音を聴くのが一番。ここでピンと来るシンセは、どれだけ音を弄ってもその印象が変わらないんですよね。メモリー後半には初期設定状態のブランクパッチが残っており、超シンプルなノコギリ波のパッチを呼び出すことができます。一聴して感じるのは、その音の強さ、色気。この時点で楽器として成立する音楽的なサウンド・・・この時点で期待大です!

御覧の通りの超シンプルなコントロールパネルですが、本当によく考えられた素晴らしい設計です。非常に大切な部分ですので少々詳しく解説していきます。予めご了承ください(笑)

音源方式はボタンを押して切り替えるトグル式。まずはアナログ(バーチャル・アナログ)音源をたっぷりご紹介。

オシレーターセクションには専用の液晶ディスプレイが用意されており、様々な情報を確認しながら設定できます。「Basic」はその名の通り、基本的なシンセ波形を選べます。ここでは、1オシレーターのシンプルなシンセサイザーとして動作します。「Shape」カテゴリーでは、右下の「OSC CTRL」ツマミで波形のモーフィングが可能。三角波とノコギリ波の中間や、好みのパルス幅の波形を生み出したり、LFOや専用エンベロープで動かすことももちろんOKです。

ここまでは「ごく普通」のアナログモデリングシンセですが、本領発揮はここから。

シンセサイザーに詳しい方ならここで当然の様に出てくる疑問「実際、オシレーターは何基あるの?」「オシレーターの切り替えスイッチが見当たらない?」・・・Nord Wave 2では、そうした専門的な知識は基本的に必要ありません!

カテゴリー「Multi」は、2基または3基のオシレーターを重ねた波形がプリセットされています。「Waveform」ツマミを回すと、「オクターブ重ね」「5度重ね」といった、一般的なシンセで使われる組み合わせが呼び出されます。このコンビネーションが実に的確で、ただ耳で聞いて選ぶだけですから本当に簡単!「OSC CTRL」ツマミを回せば、音を滲ませる「デチューン」効果をコントロールできます。

カテゴリー「Super」は、R社のシンセサイザーに搭載されて注目された、多数のオシレーターを並列で鳴らし、微妙にデチューンさせることで非常に厚みと広がり感のある音色を再現。EDM系のリード等では定番のサウンドですね。

ノコギリ波以外の波形を選べるのもポイント。個人的にツボだったのが、サイン波系を並べた「Organ」。デチューン具合をちょっと調整すれば、非常にチープでいい感じの、1960年代っぽいコンボオルガン的サウンドが作れます。是非お試しあれ!

もう一つ、シンセリード等でよく耳にする「ぎゅわぉーん!」的な派手なサウンド「オシレーターシンク」という機能を使って作るのですが、通常は2つのオシレーターを立ち上げて、片方のオシレーターをもう一方に「シンク」、そしてシンクされたオシレーターのピッチをコントロール・・・といった専門知識もNord Wave 2では必要ありません(知っているに越したことはありませんが)ただカテゴリー「Sync」を選んでリストを切り替えるだけで、効果的なオシレーターシンクの設定が各種呼び出すことが可能なのです。あとはOSC CTRLツマミを回せばギュインギュイン言わせられます。もちろんエンベロープやLFOへのアサインも簡単。

他にも、ノイズや上記にカテゴライズされないアナログシンセサウンドを作り出す設定が各種用意されています。「Misc(その他)」カテゴリー内の「Bell」もそんな中の一つ。アナログシンセでは、リングモジュレーション、クロスモジュレーション、FM等様々な手法で金属質なサウンドを作り出す上級テクニックがあります。ここではそんな設定がプリセットされており、OSC CTRLツマミを回すだけでダイナミックな音色変化を生み出すことができます。こちらも専門知識不要、効果絶大。

ちなみに、左上の「UNISON」ボタンは、オシレーターのデチューンとは別に、音を重ねて作り出すデチューン効果が3段階で選べます。僅かな滲みの1、厚みが増した2、左右に広がる3・・・細かいコントロールはありませんが、どれも超実用的。これ、最近のNord Electro/Stageの「Piano Filter」と同じ考え方ですね!

アナログシンセ系だけでこのボリューム(笑)。デジタルも行ってみましょう!

デジタル系オシレーターといえば、ウェーブテーブル。まだメモリーが高価だった時代、1周期だけのデジタル波形を繋ぎ合わせて読み出しポイントを変えることで波形を切り替えていた、黎明期のデジタル音源です。Nord Wave 2にも豊富なデジタル波形が収録されており、グリグリ切り替えているだけでグリッチっぽいサウンドを作り出せます。但し、動的な波形切替は機能としては用意されておらず、アナログオシレーターでは出せないニュアンスの波形素材として使うイメージですかね。

そしてデジタル系として忘れてはいけないのが「FM」。片方のオシレーターを別のオシレーターによって超高速で「揺らす」ことで金属質な倍音を生み出す原理の音源で、1980年代を席捲した、YAMAHAのDX7エレピに象徴される、ダイナミックな音色変化とキラキラした質感が魅力です。こちらも非常に音作りが難しい音源ですが、ざっくり割り切った設計で、OSC CTRLツマミを回すだけで、あとは耳で聴いて判断すればOKです。何度も繰り返しますが、専門知識要らずのこの安定感たるや。

そして、忘れてはいけないサンプル音源。既存の楽器音をデジタル録音した波形を素材とした、最も汎用性の高いシンセサイザー音源です。こちらは1GBのメモリー容量を持ち、Nord Electro/Stageシリーズ共通のNord Sound Library 3.0フォーマットの豊富で質の高いライブラリが使用できます。管、弦、打楽器にメロトロン、何でもござれ。

メモリー容量が物を言う、いわゆる「ピアノ」に関しては流石にNord StageのNord Piano Libraryのクオリティには敵いませんが、YAMAHAのC7グランドピアノや、アップライトピアノ等一通りプリセットされています。色気も十分、バンドアンサンブルでガンガン弾くのも全然問題ないでしょう。ベロシティカーブの鍵盤との相性も抜かりなし。

Nord Stage同様、ライブラリから波形を読み込むと、エンベロープ等の設定が自動的に最適な値にセッティングされるのも超親切な機能です。ピアノ波形を選べば、ちゃんと音が減衰してくれ、ストリングス波形ならふわっと立ち上がって持続してくれるので、あとは微調整するだけ。ステージでの演奏中だって対応できるレベルじゃないでしょうか。

もちろん、波形は素材としてゼロから音作りをしたい場合には、シフトキーを押しながら「RAW SMP」を選べばOK。

 

・・・とまぁ、4種類の音源を搭載した大規模なシンセながら、かつてここまでシンプル&専門知識要らずで、良い音が出来てしまうシンセが存在したでしょうか。各パラメーターの設定値も絶妙で適格なレンジに設定されており、楽器音として破綻しにくく、かつコアなシンセファンにも物足りなさを感じさせないものであることも付け加えておきましょう。恐ろしい子・・・!

フィルターセクション

フィルターやエンベロープ等のセクションは、Nord Leadシリーズとほぼ同様、シンセサイザーの教科書に載せたいレベルの超基本的なレイアウトです。フィルタータイプもNord Lead 4と比較して48dBやTBタイプ等が削られていますが、使いやすさを重視した結果でしょう。実用上は全く困らない、というかこれだけでも十分贅沢です。

よく海外のヴィンテージ・シンセの音の太さの秘密として取り上げられる、フィルター部分での歪みも、3段階のドライブスイッチで適格に再現されています。

LFO/アルペジエイター等

音に周期的な変化を与える「LFO」は、1基のみ搭載。どれだけ複雑なモジュレーション経路を組むかが勝負(?)な変態サウンドメイキングには少々物足りないスペックですが、オシレーターセクションで見た通り、こうした変態サウンドは既に各音源内に最適化して実装されていますから無問題です。ビブラート専用のLFOもちゃんと用意されていますから、パルスワイズ・モジュレーションを掛けたらビブラートが使えない、というアナログシンセあるあるとも無縁です。ビブラートLFOはホイールだけでなく、アフタータッチや打鍵後一定時間でビブラートが掛かるディレイ機能も用意。両手が塞がった状態でも安心ですね。

アルペジエイターも実に軽快な動作で直感的。通常のアルペジオだけでなく、リズミカルにサウンドを刻むGATE&パターンも適用できます。下の設定では、左右にサウンドが飛び交うパターンが適用されています。

エフェクトセクション

Nordキーボードを知る方ならば、説明不要な一角ですね(笑)。特にディレイセクションは細かな拘りパラメーターが各種用意されており、アナログディレイや「DEEP」モード、フィードバックモジュレーション等、是非その出音を体感頂きたい部分です。EQセクションの「DRIVE」ツマミは、フィルターセクションとは若干質感の異なるオーバードライブを適用できます。リバーブタイプも充実、積極的にアンビエントなサウンドを作りたくなりますね!

レイヤー/マスターセクション

こうして作ったサウンドは、最大4パートのレイヤー/スプリットが可能です。4パートのON/OFFやソロ、レベルや左右バランス等もここでコントロールでき、バーグラフ表示のLEDで状態が一目で判るのも良いですね。

また、4つのパートの中で「グループ」を組むことが可能です。オシレーターやフィルター、エフェクト等の各セクションの「GROUP」ボタンをONにすることで、グループ化されたサウンドのパラメーターを一括でコントロールできます。

例えばオシレーターセクションの「Multi」カテゴリーでは選べないオシレーターの波形/インターバルの組み合わせも、ここでグループ化してそれぞれ設定することで実現可能です。また、複数パートのアルペジエイターでリズムパターンを組んで、手弾き用に1パート、という使い方ももちろん可能。豊富なプリセットで様々な可能性が体験できます。

マスターセクションもElectr…(以下同文w)。カテゴリー別に音色を絞り込んだり、ライブモードでステージで使うセットを並べたり、シフトボタンで各セクションの裏機能を呼び出したり。

押している間だけ任意のパラメーター値を変化させられる「IMPULSE」ボタンやオクターブシフト、ホイールへのパラメーターアサイン等はこちらのセクションに。

コントローラー/キーボード

Nordのシンセを語るなら外せないのが、この木製ピッチスティックとアルミ製ホイール。文字通り板バネを曲げる(ベンド)ことでピッチをベンドできるピッチスティックは、まるでギターのチョーキングやバイオリンのビブラートの様にナチュラルで音楽的なニュアンスをサウンドに加えることができます。レバーを弾くクリケット奏法も、このコントローラーだからこそ活用できますね。

そして最後にNord Wave 2の大きなポイントとして挙げたいのが、61鍵ウォーターフォール鍵盤の採用です。これまで一貫して49鍵のシンセ鍵盤が採用されてきたNordシンセサイザーが、鍵盤数を拡張した理由は、ここまで長文にも関わらず読んで頂けた方ならば説明は不要ですよね。

背面パネルもシンプル。ヘッドフォン端子にLINE出力(L/R)、ペダル端子に外部入力(ミニジャック・マスターへのミックスのみ)、MIDI端子とUSB B端子が並びます。フィルター外部入力やCV/GATE入出力等のマニア好みな端子はありませんが、そういうキャラでないことは自明ですよね。

サイドパネルはグレーの粉体塗装のアルミ製で、シンセらしさを演出します。

重量は61鍵・金属筐体としては8.75kgと軽量級。専用ソフトケースは今秋発売を予定していますが、NE73用のケースでもそれまでは代用可能との事(ちょっと横幅が余ります)。再び楽器を担いで、スタジオリハ&ライブが気軽にできる世の中に戻ることを願いましょう・・・!


完全プレイヤー志向のシンセサイザー

全てが新しくなったNord Wave 2は、何度も登場した「Electro/Stage的」というキーワードが示す通り、シンプルな操作、レイヤー&スプリットを駆使して演奏することを主眼においた完全プレイヤー志向の楽器として再定義されたシンセサイザーです。本モデルがあえてNord Lead 5を名乗らないのも、ピュア・シンセサイザーNord Leadシリーズとは別コンセプトの楽器である所以でしょう。

 

歴代最強とも言えるシンセサイザー音源を搭載し、シンセサイザーの音作りに精通した方であればどこを取っても「判ってるなぁ」とニヤリとする要素満載。一方で専門的な知識なしでも高度&効果的な音作りを楽しめるユーザーフレンドリーな楽器・・・何て恐ろしい子!

 


いよいよ発売開始!

満を持して・・・!Nord Wave 2は、2020年7月17日発売予定となりました。更に、渋谷・鍵盤堂にて先行展示も予定しております!

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Nord Lead 4生産完了のお知らせ

一方で、ピュア・シンセサイザーNord Leadの最新&最高峰モデル「Nord Lead 4」の生産完了が同時にアナウンス、在庫限りで販売終了となることが判明しました。伝統のデザイン&柔軟なモジュレーションによる音作りの可能性(しかも最終特価!)を取るか、バリエーション豊かな音源とステージでの演奏性を取るか・・・どちらも捨てがたいのですが、迷うことができるタイミングは今、とだけ申しておきましょう。>>>>>>

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