【新製品レビュー】話題のteenage engineering OP-1 field!触ってきました♪

teenage engineering OP-1 field

2011年の発売後、度重なるアップデートを重ねながら、電子楽器としては異例の10年以上のロングセラーモデルのOP-1が、「OP-1 field」として新しく生まれ変わります。

8月10日発売で既にご予約受付中ですが、ひとあしお先に実機を触ってきました♪

OP-1とは?

一応、オリジナルのOP-1についてもざっとおさらいしておきましょう。OP-1は小さな筐体の中に、シンセサイザー、リズムマシン、サンプラー、4トラックのレコーダーが詰め込まれた、所謂「ガジェット系シンセ」の草分け的存在。バッテリー駆動&スピーカー内蔵により、どんな場所でも本格的な音楽制作やパフォーマンスが楽しめるだけでなく、その洗練された北欧デザインと質感でミュージシャンのみならず、アート/デザイン系のクリエイターにも愛される製品です。実際、10年以上が経過した現在でも、そのデザインは全く古さを感じさせません。

そんなOP-1の新作「field」ですが、残念ながら価格についての話題ばかり先行してしまっております。実際、オリジナルOP-1からは実に10万円以上アップしたプライスは、昨今の円安&半導体不足の状況を鑑みても、妥当性を見出すことは難しいかもしれません。

今回、そうしたユーザーの皆様の疑問&懸念を解消すべく、オリジナルOP-1と比較しながら実機をチェックしたいと思います。

デザイン

上がオリジナルOP-1(以下OP-1)、下がOP-1 field。

OP-1がコントロールパネルと同色に塗装されているのに対し、OP-1 fieldはより金属らしい質感を押し出した、シルバーアルマイト仕上げの筐体に変更されています。機能別に色分けされていたOP-1に対し、REC&MICの赤以外は全てモノトーンに抑えられたOP-1 field。ノブのデザインや配色も大人びて見えますね。ノブの色に合わせて、ディスプレイのグラフィックの配色も変化しています。

全体のサイズに大きな違いはありませんが、バスタブ状の筐体の高さが低くなったため、コントロールパネル部が一段高くなった様なデザインとなっています。同色&ツライチのOP-1に比べ、よりApple的な高級感のあるデザインになった印象です。

右端のレベルインジケーターも、より高精細な白色LEDに進化しています。

裏面も地味に異なるポイント。OP-1 fieldは底面パネルが樹脂製に変更されており、膝に乗せたときの冷たさが解消されています(笑)。あと、後述しますが内蔵スピーカーがパッシブラジエーター構造に進化しており、底面と側面に孔が空けられています。

ネジ穴のハードポイントは無くなり、ドーナツ型のベルクロになりました。「このサイズ&重量ならこれで十分」という事でしょう。

電源スイッチはスライド式からタブ構造に。ポート類の構成に変化はありませんが、OP-1で見られた点字表記が無くなっている点、ちょっと残念です。

ディスプレイも、より解像度が高くなりました。シーケンサー・アニキ達のデザインもデザインはそのまま、配色が変わって親しみやすくなりました。あと、地味にボタン類のフォントも新しくなっていますね。

ドラムゴリラの二人も、相変わらずウホウホ楽しそうです。

とりあえず、外観的な変化はこの位でしょうか。仕上げやデザイン面で高級感を増した部分はありますが、11年の経過を考えると大きなアップデート部分はありません。逆に言えば、如何に先代の完成度が高かったかを実感するところですね。

 

100以上の新機能

新しく追加/アップデートされた機能は100以上だとか。
例えばシンセエンジン/音色によってバラつきがあった音量が、OP-1 fieldでは調整できる様になった点。

「ライブの際、PAの方から音量差について指摘を受けていたので、一番嬉しい新機能かも」(OP-1ユーザーの鍵盤堂・ナカヤマ談)

こうしたユーザーのフィードバックを反映した「重箱の隅」系の改良が積み重なることで、トータルでのサウンド&使い勝手に大きな差が出てくる訳です。

 

全てを紹介する訳にはいきませんので、大きなポイントを幾つかチェックしていきます。

Point1:内蔵スピーカーが大幅進化

デザイン面でも触れていた、側面のスリットと裏面の格子状の孔。これは放熱用のスロットではなく、OP-1 fieldで新規に採用された「パッシブラジエータ」構造の新しいスピーカーシステムに依るものの様です。

パッシブラジエータとは、ドライバー(磁気回路)の無いスピーカー状の構造物で、アクティブなスピーカーの振動に共鳴して、主に低音域を増幅することができます。小さなスピーカーで低音を補う方法としては、バスレフポートが一般的ですが、ある程度の容積とポート長が必要です。パッシブラジエーターはOP-1の様な極小空間の中で豊かな低域を再生するための最適解と言えるでしょう。

実際に比較してみましたが、その差は歴然。OP-1では判り難かった中低域の質感が、OP-1 fieldでは滑らかに再生されています。

勿論「このサイズの筐体としては」なので、然るべきモニターで再生したときのレンジ感は期待できません。但し、低音の出方や質感等は内蔵スピーカーでも十分予測できる情報量がありますし、ソファに寝転んで鳴らしていても十分盛り上がれる音質である点は、数万円分の価値はあるのでは?と思います。

 

Point2:4つの新しい録音スタイル

ループを設定し、トラックとサウンドを選んで重ねていく・・・OP-1のコアとなる部分。ブレークやリバース、チョップ等、ただ「録る」だけではない、各種ギミック満載です。

更に今回、新しく4つのスタイルを選ぶことが可能になりました。

  • スタジオ:従来通りの、元音に忠実でハイファイなレコーダー
  • ヴィンテージ:オープンリール・マルチトラックレコーダー。ハイファイな中にも、磁気テープならではの温かいサチュレーション感が良いですね。個人的にイチオシ。
  • ポータ:カセットMTRの質感を再現。狭めのレンジ感やうっすらと乗るヒスノイズ等、アラフィフ世代感涙?
  • ディスクミニ:いわゆるMD(!)。美味しい帯域以外をがっつり圧縮した、1990年代の光磁気ディスクによる「庶民のデジタルサウンド」。

MD・・・。CDからデジタル録音したのに、何故こんなに音が変わるんだろうと当時は不思議に思ったものです。この独特なカラっとした軽めの音質を意図的に再現する意味がおっさん世代には理解できませんが(笑)、若い世代にとっては新鮮なのかもしれません・・・。

(個人的には、オービタルやデリック・メイの音楽は、MDの音質とセットで刷り込まれていますw)

Point3:新しいシンセエンジン「Dimension」

汎用性の高いモデリングシンセ「Dimension」が新しく追加されました。滑らかに変化する波形やフィルター、対応して動くグラフィック等、明解な操作系で扱いやすい印象です。OP-1は癖強めの音源が多く、意外に素直な「シンセらしい」音色(レゾナンスを効かせたフィルタースウィープなど)が使い難かった印象があるので、この音源の搭載は有難いところです。

Point4:新しいリバーブ「Mother」

いわゆるデジタルリバーブですが、やはりteenage engineeringならではの凝ったグラフィックが面白い!

対象との距離や壁の材質・硬さによる反射音の変化がツマミの動きに応じてグリグリ変わります。ゲートで反射音のリリースを強制的に短くしたり、逆に長めの残響音でMIXをどっぷり上げたり・・・このアンビエント感は癖になりますね。

 

Point5:新しいシーケンサー「HOLD」

アンビエントといえば。シーケンサーにも、「HOLD」という新しいモデルが追加されています。その名の通り、トリガーした音をずっと鳴らし続けるだけのシンプルなシーケンサー(もう一度弾くと解除)。シンプルですが、ドローンアンビエントを作るときに嬉しい機能です。ホールドした音はそのままオクターブ変更も出来るので、音楽的な展開も生み出せます。

 

Point6:音質・シグナルパスの改善

決してOP-1の音がアレだった訳ではありませんが、OP-1 fieldはシグナル・チェーン全体のオーディオ信号が32ビット処理にグレードアップされました(従来は24ビット)。内蔵スピーカーでは判りませんが、大音量で鳴らした際の低音の密度、ダイナミックレンジの広さはエグいです。カセットやMDなどの音質再現も、この高精細なシグナルチェーンがあってこそ、その恩恵が享受できるというものです。

音を劣化させるために高音質化する、というスタイル、好き。

シグナルパスに関してはもう一つ、サンプラーがステレオに対応したことも大きなポイント。ステレオ素材の音像をそのままOP-1で扱える様になります。

teenage engineeringフルセットを堪能

まとめ:OP-1 fieldは買い?

数々の新機能や新しいサウンド(ドラムパックも増えてます)を満載し、デザイン面も洗練度を増したOP-1 field。

意外性のあるトリッキーなものは少なく、正常進化の積み重ねにより、トータルバランスを保ったまま性能が底上げされた製品である、というのが結論です。

そう言ってしまうと、OP-1 fieldの価格差に正当な根拠を提示するのは困難ですが、その底上げ部分の上げ幅がどれも素晴らしく、特にオリジナルOP-1ユーザーにとっては操作する度に嬉しくなる要素がてんこ盛り。

この細かな嬉しさの積み重ねに、金額分の価値を見出すことができるのではないでしょうか。
エレキギターやヴァイオリン、他生楽器を選ぶ方は、こうした僅かなフィーリングの違いが作品や演奏に大きな違いを生むことを実感しています。

また、急速に進む円安と未だ続く半導体不足、不安定な世界情勢による物価上昇という、かつてない逆風の中のリリースであることも考慮すべき点でしょう(10年以上前の物価と比較するのはフェアではありませんし)。

純粋に現在の製品として評価する限り、安くはありませんが価格に見合った体験を与えてくれる、価値ある製品です。

ズバリ、「買い」です!

 

teenage engineering OP-1 field

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